むのたけじの言葉

戦争中は朝日新聞の記者として記事を書き、戦後すぐに国民を欺いていたことを悔いて退社した後、秋田でミニ新聞「たいまつ」を発行したむのたけじの著書に以下の記述があった。

「思想っていうのは書くものなの? しゃべるものなの? 大学で講義するものなの? 違うんじゃないの? 思想というものは生きるものではないの? 思想は生きるものだという考えがないんだよ。だから、八月段階(=終戦)のあの強烈なショックを受けながら、いのちを賭けてどう新しい道を歩むかということを、我々日本人は行動として表現できなかったんじゃないですか」。

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また、自分と同じく、終戦後に朝日新聞を去った美土路昌一(後に朝日新聞社長、全日空初代社長に就任)や入江徳郎も結局は新聞社に戻ったことを暗に批判して次のように書いている。

「そういう気持ちがあるならばなぜ、それこそ個々の良心の辻褄合わせでなくて、なぜ集団としての行動をあの八月段階でやれなかったのか」。

残念ながらすでに亡くなったが、むのたけじの前に面と向かって立てる戦後および現代のジャーナリストが何人いるだろうか。