映画『新聞記者』

 

映画『新聞記者』を観た。日本でもようやく“メディアVS権力”を、しかも現実を題材にして描いた映画が製作され、さらにメジャー作品として主要映画館で上映されるようになったことを歓迎したい。

私は“メディアVS権力”に強い関心があり、ベトナム戦争の機密をワシントンポストの記者が暴いた『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』も、イラク開戦の虚妄を中小の新聞社が暴露した『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』も観た。一昨年はオリバー・ストーン監督の『スノーデン』も観た。

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 リスクを承知で『新聞記者』に主演した松坂桃李の勇気は称賛に値する。もう一方の主役シム・ウンギョンはミスキャストだと思う。日本の女優が出演を断ったために韓国の女優を起用したそうだが、存在感が希薄で、モデルである望月衣塑子さんの気迫が伝わってこない。また、内閣調査室のシーンだけをフィルターをかけて映すのは、映画としては邪道だろう。

というような細かい欠点はさておき、こういう映画を現在の息苦しい日本社会に送り出した製作者たちに力いっぱいの拍手を送りたい。

冒頭で「日本でもようやく」と書いたが、事実に基づいて“メディアVS権力”を描いた日本映画は過去にもあった。日米政府による沖縄返還の密約を暴露した毎日新聞の西山記者が主役の『密約 外務省機密漏洩事件』。西山記者を北村和夫、機密を漏らした外務省職員を吉行和子が演じた。原作者の澤地久子として大空真弓も登場する。製作は30年前だが、再上映された2010年に観た。